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「カンフーパンク」を生んだ会社 — Phantom Blade Zero 開発元 S-GAME とその世界観

攻略Tips コミュニティ確認済

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注意: この記事は公式発表と開発者インタビューをもとにした発売前時点(2026年6月)の内容です。製品版で変わる可能性があります。

Phantom Blade Zero を語る際、「ソウルライク」や「仁王系」という分類より先に押さえるべき言葉があります。それが開発元 S-GAME の提唱する「Kungfupunk(カンフーパンク)」です。中国インディーの草の根から20年近くかけてAAAタイトルに至った北京スタジオの素性と、この独自コンセプトの成り立ちを整理します。

S-GAME とは何者か

正式社名は北京灵游坊网络科技有限公司(Beijing Lingyoufang)です。法人登記は2011年ですが、前身「Soulframe Studio」は創業者の梁其偉(Liang Qiwei、ハンドルネーム「Soulframe」)が清華大学在学中の2006年に立ち上げたもので、2つの年号が資料によって混在する理由はここにあります。

梁其偉のキャリアは異色です。清華大学を卒業後、エール大学で建築学の修士号を取得しました。ニューヨークの建築事務所への就職が決まっていながら、それを断って帰国しゲーム開発に踏み出しています。建築的な空間設計への感覚は、のちの世界観構築に色濃く反映されています。

インディー → モバイル → AAA の3段階

フェーズタイトル時期規模感
インディーRainblood(雨血)2008年累計400万DL超
モバイルPhantom Blade(幻刃)2017年ピーク月商 約4,000万元
AAAPhantom Blade Zero開発中チーム140名超

RPGツクール製の2DアクションRPG「Rainblood」から始まり、モバイル「Phantom Blade」で商業基盤を固め、2,000万人超のシリーズファンベースを背景にコンソール・PC向けAAAに挑む構図です。現在はシリーズの最新作である2023年リリースの「Phantom Blade: Executioners」(iOS/Android/PS/PC)もラインナップに連なります。

Tencent出資と"非売"の姿勢

2021年、Tencentが S-GAME に25%出資しました。残りは梁其偉とチームが保有し、クリエイティブコントロールは維持されています(取引額は非公表)。

この文脈で注目すべき逸話があります。梁其偉は「Soulframe」を中国で商標登録していましたが、Digital ExtremesとTencentが続編ゲームのために商標の買収を打診してきました。彼の返答は一言、**「売らない(I'm not selling)」**だったとPCGamerが報じています。財務的な独立性へのこだわりは、出資交渉の構造にも表れています。

拠点は北京(約100名)・上海(モーキャプ/アニメ、約20名)・香港(アート、約16名)・ロサンゼルス(パブリッシング)の4都市に分散する体制です。

Phantom Blade Zeroの戦闘シーン|pbzの公式スクリーンショット pbz 公式スクリーンショット(プレスキット)

「Kungfupunk」とは何か

梁其偉はGameRantのインタビューで、このコンセプトをこう定義しています。「カンフーという中国の伝統文化と、スチームパンク/サイバーパンク的要素を組み合わせた様式。古い文化と現代的感性の対話だ」。

ジャンル命名の根拠として彼が好んで挙げる比喩があります。「60〜70年前、ブルース・リーがカンフーをハリウッドに持ち込み、"カンフー映画"という新ジャンルを生み出した。自分たちは同じことをゲームでやろうとしている」(RPGSite)。「仁王」や「黒神話: 悟空」が中国・日本の伝統美術をベースとしながらもそれぞれ固有のトーンを持つように、S-GAME は「カンフーパンク」という固有のレーンを定義しようとしています。

獅子舞の刃 — 概念が生まれた瞬間

コンセプトの原点として梁其偉がViceに語ったエピソードが象徴的です。獅子舞の一座が盗賊に襲われたとき、演者たちは獅子頭の中に隠した刃や槍で反撃したといいます。祝祭の道具が武器に転じる、この実話のねじれこそが「現実のカンフーパンク」だと彼は気づいたそうです。

視覚的に言えば、寺院の建築・装束・色彩は伝統的な中国美学を守りながら、ボスのロボットアームや大砲、火を噴く獅子頭はサイバーパンク的な異物感を持っています(GameRant)。相反するものを同居させる設計原理が、このジャンル名の実体です。

Phantom World — 明代と機械とホラーの同居

伝統と機械が同居するPhantom Blade Zeroの寺院|pbzの公式スクリーンショット pbz 公式スクリーンショット(プレスキット)

舞台となる「Phantom World(幻刃世界)」は、明王朝期の中国を原型とした仮想世界です。スチームパンク的な機械、オカルト、ダークファンタジーホラーが混在し、意図的に荒廃した暗いトーンで統一されています(Wikipedia / PlayStation Blog)。

美術の基層には中国の民俗文化が根を張っています。祖先崇拝の儀礼、獅子舞、人形遣い、傩(ぬお)面、変面、京劇。これらは装飾としてではなく、世界の論理として機能するよう組み込まれているとチームは説明しています。SEKIRO の「葦名」や仁王の「戦国日本」が時代考証を美術の芯に据えたのと同じアプローチです。

インスピレーション源として公式に挙げられているのは、金庸の武侠小説、70〜90年代の香港アクション映画、漫画「バガボンド」「ベルセルク」「クレイモア」、そして「忍者外伝」「SEKIRO」「仁王」です(PlayStation Blog / InvenGlobal)。武侠文学とダークファンタジー漫画と日本のアクションゲームという組み合わせは、S-GAME が「Phantom World」をどの座標に置こうとしているかを示しています。

本物のカンフーマスターと作る所作

開発でとりわけ力が入っているのが身体動作の正確さです。S-GAMEは上海のスタジオで20名超の実在カンフーマスターと協働し、モーションキャプチャの基礎を手付けアニメで補完しながら動作を構築しています(InvenGlobal)。

さらに実写映画「るろうに剣心」シリーズ等でドニー・イェンのスタント監督を務めた谷垣健治がアクションディレクターとして参加しています(PlayStation Blog / RPGSite)。「実際のカンフーを知る人間がゲームアクションの設計に関わる」という体制は、世界観の説得力を外からも補強しています。想定プレイ時間は約40時間と公表されています。

Phantom Blade Zeroのキーアート|pbzの公式アートワーク pbz 公式アートワーク(プレスキット)

まとめ — この設計が狙うもの

S-GAME が「Kungfupunk」という言葉を作った理由は、単なるマーケティングではありません。ブルース・リーの比喩が示すように、既存ジャンルに寄り添うのではなく固有のジャンル名を自分たちで定義することで、比較される座標軸を自ら設定しようとしています。

建築家志望の創業者が設計した世界観、インディーから20年かけて蓄積したファンベース、そして「売らない」という態度が生み出したクリエイティブコントロール。Phantom Blade Zeroの発売日はいまだ未確定ですが、このスタジオが何者で何を作ろうとしているかは、すでに十分に輪郭が見えています。

情報ソース

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